カタクリの大群落が山頂一面を埋め尽くす?という、島根と鳥取の県境にまたがる「船通山」別名「鳥髪の峰」へ。標高は1142.5m、登り2.4km・1時間半、下り2.5km・2時間(実歩行3時間30分弱・標高差540m)で登るには手頃だ。だが現地まではちょっと遠いので(約430km)宿泊で計画。せっかくの山陰遠征だからと、名峰“三瓶山”にも足を運んだ。
出雲は神話とロマンの里。船通山のある奥出雲町横田は、わが国で最も古い歴史を持つ地域の一つで、日本神話「八岐大蛇(ヤマタノオロチ)」伝説の舞台であり、古来からの伝承を受け継ぐ「たたら吹き製鉄」の火を燃やす町として、また「雲州そろばん」の生産地として知られる。
●4月30日(水):9:30・2台の車は高速古賀S.Aで合流、中国道を庄原I.Cで下りて備後落合から奥出雲おろちループ橋(日本最大規模の2重ループ方式の道路)を下りて斐乃上温泉・斐乃上荘「ヴィラ船通山」(日本三大美肌の湯として知られる)に夕刻到着(泊)
★予測走行距離計算では430kmと見ていたが、実走行429kmを示していた。
中国道は単調な高速道かと思っていたが、さすがに山腹を走る途中の景色はすばらしく、沿線の瑞々しい新緑の中、次々と淡いピンクのミツバツツジなどの花が彩りを添え、快適なドライブであった。宿の温泉は“日本三大美肌の湯”ちして有名。料理も品数があり美味しかった。
【とんでもないパプニング】
上記の斐乃上温泉の宿には午後4時に着けばよいので、途中「名所・鬼の舌震」に寄るつもりでいたが、その前にガソリンスタンドに寄ったのがいけなかった。世話人の藤井さんの車はディーゼル車なので「軽油満タン」と言われたが、店員が間違えて「ハイオク」を勝手に入れてしまった。ガソリン車なら仕方がないと高い料金を払ってそれで終わりなのだが、ディーゼル車はそういう訳にはいかない。点火せずに走らない可能性があるので、今入れた燃料を全部出さなければならない。入れ替えに30分以上も掛かったので「鬼の舌震」へ行かず、直接宿へ向かった。
(付記・原田和夫)
●5月1日(木):カタクリの花が乱舞する、伝説の山 船通山 晴
(メンバー)
松九会登山クラブ:藤井哲夫・和子夫妻、澤田眞次・律夫妻、原田和夫
まいづる山岳会 :井上孝、石内美佐子、児玉かめ子、友清節子
(コースタイム)
宿8:00…8:37鳥上滝コース登山口(WC、駐車場あり10台程度)…9:20鳥上滝…9:40水場(標高1000m)…10:20船通山山頂・カタクリ群落・イチイの木観賞11:10…亀石ルート下山…12:20亀石登山口(WC、駐車場あり30台程度)…水辺公園(昼食)…13:00登山口・斐乃上荘P=(藤井和子松江行き列車に乗車の為、JR出雲三成駅で下車)=16:45三瓶山麓国民宿舎さんべ荘(泊)
宿の駐車場に車を置いて歩き水辺公園から先の車道は、右の鳥上滝・左へ亀石コースの二手に分かれる。足元にはいくつもの花房をつけたフウロケマンが並ぶ。右のコースを取り緩い勾配の続く舗装道から杉林の道を過ぎ、沢水が流れる石畳の登路を行く(昔々、山陰と山陽を結ぶ交通の要所であったことを物語る石畳の道で)、宝満山や英彦山などの修験道とは違った形態の、言わば生活道であり、随分大きな石が積み並べられて先人のご苦労が偲ばれる。ボタンネコノメソウ、ミヤマカタバミ(白い花はつけているが、朝はまだお目覚めではない)が数多い。何度か沢を渡って高度を上げていくとエンレイソウ、薄紫のトキワイカリソウ、ハシリドコロ(チョコレート色・猛毒)などの花やトリカブト(まだ花はないが猛毒)が続き、鳥上の滝(落差約15〜16mの小さな滝だが、ヤマタノオロチの根城であったといわれている)が左に現れる。濃い色のショウジョウバカマや、初お目見えのサンインシロガネソウ(淡黄色)の花も珍しく、花のオンパレードにカメラの出番が増える。
鉄製の階段を登り沢と別れ稜線に出る。標高1000mの標識のところに、ちょうど水場があり一休みして喉を潤す。左右が開けた尾根道を行くと、ひとつ、ふたつ、ポツリ、ぽつりと赤紫のカタクリが目に入ってくる。下山ルートの亀石分岐を過ぎると、木道が敷かれ両側にはロープが張られている(カタクリ保護)。…ン?登山者が急に増えてきた!…、咲き並ぶカタクリに皆カメラを向けて歩みが鈍くなっている。清楚な紫色の花弁の先端をひょいと背中に持ち上げた、形のいいカタクリが何とも美しい!。
丸太の階段を登り詰めると広い草原に出た!、頂上だ。すごいッ、目の前一面に…!カタ・カタ・カタ・カタクリだ!…広い草原を埋めつくす大群落、圧巻、茫然そして感嘆!。九州では見られない光景だ…。またまたカメラが大忙し!。すわったり、腹ばいになったり、寝っ転がったり、皆それぞれにアングルを変えて写しまくる。
山頂には「天叢雲劔(あめのむらくものつるぎ)出顕之地」の碑(神話に、この山にはヤマタノオロチ(大蛇)が棲み、須佐之男命(すさのおのみこと)が退治。大蛇の尾から現れた「草薙(くさなぎ)の剣」が後に出土した地…)と祠がある。頂上からの展望は360度で伯耆大山(ほうきだいせん)、隠岐島、明日登る三瓶山などが見えるはずだが、最近の登山では殆ど霞が掛かって(黄砂か?か)眺望が効かない。
花に満足した後、鳥取県側に100mほど急坂を下って、イチイの木を見に行く。2本あるが高く伸びた木ではなく低い方がそれで、幹が幾つも分岐して枝を低く横に這わせた大きな樹形だった。説明板に「国指定天然記念物・樹高5.4m、根回り8.3m、樹幹周囲4.3m、枝張りの全周が77.5m、その総面積422.35u、推定樹齢2000年、世界最大級のイチイの巨木…」とあった。
下りは亀石ルートへ入りブナの原生林の中をジグザクに歩く。登りは石段道だったが、こちらは丸木の階段道だ。やがて傾斜も平坦になり、長い水平道が続く。エンレイソウはこれでもか!というほどに連なり、朝はつぼんでいたミヤマカタバミも花を綺麗に開かせ、またキクザキイチゲも純白の美しさを競うように見せてくれる。
下りてきた水辺公園のベンチで昼食。斐乃上荘に戻り、JR出雲三成駅で松江に行く藤井和子を降ろし、今晩の宿、三瓶山麓の国民宿舎・さんべ荘へ車を走らせる。(泊) (藤井哲夫 記)
【写真撮影:原田和夫】
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